接近事故データが自律走行アルゴリズム学習を加速
ミシガン大学工学部の研究チームは、自動運転アルゴリズムの学習プロセスにニアミスデータを統合することで、安全性を最大90%向上させることに成功したと発表した。本研究は今年、学術誌Nature Communicationsに掲載された。 米国では年間約4万件の交通事故死が発生しており、これまで1600億ドル以上が自動運転技術に投資されてきた。しかし、安全性への懸念から一般の信頼獲得は依然として遅れている。自動運転車の制御アルゴリズムは、実走行データやシミュレーションを用いて反復学習されるが、AI開発におけるシーソー現象により、ある欠陥を修正すると別の想定外の不具合が生じやすいという課題があった。従来はコストのかかるニューラルネットワークの再設計よりも、衝突データのみを用いた学習が主流だったが、ミシガン大学交通研究所のヘンリー・リュー所長らは、ニアミス事象も衝突データと同等に安全基準を満たす上で不可欠であると指摘した。 シミュレーション環境では実際の衝突は稀である一方、ニアミスは約1000倍の頻度で発生する。研究チームは、衝突失敗例とニアミス成功事例を統合した学習手法を開発し、ミシガン大学のMcityテスト施設で実証を行った。その結果、アルゴリズムの安全性性能が90%向上し、テストに要する走行距離を従来比99.9%削減することに成功した。 本研究は自動運転技術の安全性検証を劇的に効率化し、レベル4およびレベル5の高レベル自動化への移行を加速させると期待されている。ニアミスデータの積極的な活用は、信頼性の高いアルゴリズム開発を促進し、自動運転技術の社会実装と一般の受容性向上に寄与するものと見られている。
