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AIが耐性菌問題に挑む

人工知能の活用が抗菌薬耐性問題の解決に向けた創薬プロセスを加速させている。カナダのマックマスター大学のジョナサン・ストークス博士は二〇二三年、約一万種類の生体活性化合物をスクリーニングし、腸内感染症の原因菌に特異的に作用する新分子エンテロロリンを同定した。従来の手法に代わり、マサチューセッツ工科大学のレジナ・バルジレイ教授チームが開発したAIツールDiffDockを用いることで、分子の標的タンパク質と作用機序を迅速に予測し、実証実験を効率化した。 バルジレイ教授は二〇一八年より同大のジェームズ・コリンズ教授と提携し、ニューラルネットワークを用いた創薬モデルChempropを構築。これにより、結核菌や多剤耐性大腸菌に対し強力な活性を示すハリシンを発見している。英国インペリアル・カレッジのモリー・バートレット氏は、AIモデルの精度向上にはデータの質と多様性が不可欠だと指摘する。計算ツールと生成AIを活用し、細菌細胞膜透過性などの化学的特性を正確に特徴量化するデータセットの整備に注力している。 さらに、米ペンシルベニア大学のセサール・デ・ラ・フエンテ教授らは、絶滅生物のタンパク質データベースを解析するAI APEXを開発。三万七千種類以上の候補肽を同定し、細胞壁ではなく細胞膜を標的とする新規作用機序を持つ複合物を確認した。さらに生成AI ApexGOを用いて自然界に存在しない合成肽を設計し、約百種類を評価した結果、八九%に抗菌活性が認められている。 一方で、コリンズ教授は生成AIが設計した小分子化合物の多くが、化学的安定性や合成コストの観点から現実的な製造が困難だと警告する。AIによる標的探索と機序解明は創薬期間とコストを大幅に削減する可能性を秘めているが、生化学的実用化に向けては化合物の合成可能性を伴う設計制約のさらなる最適化が課題となる。抗菌薬耐性対策において、AI駆動の創薬アプローチは従来の限界を克服する重要な基盤技術へと進化しつつある。

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