AIが再設計する自動車、しかし自動車メーカーは「最適化」にとらわれている
自動車業界は、生成AIの力を「部品の最適化」に使っているが、その根本的な誤解が、今後の存続を脅かす可能性がある。著者でAWSの自動車・製造業専門ソリューションアーキテクト、ニシャント・アラオラ氏は、ある大手自動車メーカーの現場で、AIでサスペンション部品の重量を40%削減する「ブレイクスルー」を達成したと喜ぶエンジニアたちの姿を目の当たりにした。しかし、その成果は1950年代から続く既存の設計パラダイムの「微調整」にすぎず、AIの真の力——「再発明」——を活かしていないと指摘する。 AIは、単に「今ある設計をどう改善するか」を問うのではなく、「そもそも車はこうあるべきか?」という根本的な問いを投げかけるべきだ。アラオラ氏が指摘する「最適化の罠」は、既存の設計ルール(例:エンジンを下に置く、ドアは四角い)を前提にAIに「軽くしろ、強度は保て」と命じる。これにより10~20%の軽量化は達成できるが、その枠組み自体に問題がある。一方、中国のEVメーカーBYDやNIOは、AIを使って「車は必要以上に重く、四角く、部品が多すぎないか?」と問う。BYDは半導体から車体まで自社で生産する垂直統合により、AIを全バリューチェーンで活用。NIOは「バッテリーは車に装着する必要があるか?」と問い、3分で交換できる充電ステーションを実現。これは「最適化」ではなく「再発明」の典型である。 アラオラ氏は、自動車メーカーが「革新」を掲げても、実際には「短期的なROI」を求める組織構造が再発明を阻害すると分析する。CFOは「500万ドルで15%コスト削減」と「5億ドルで30%削減(5年回収)」のどちらを選ぶか、当然前者を選ぶ。だが、その選択が、将来の市場を奪われるリスクを抱える。 再発明の実例として、アダプトがAIで設計した部品は、従来の8つの部品を1つに統合し、重量を50%削減。見た目は樹木の枝のように「異質」だが、衝突安全性も向上した。このようなデザインは、初期には「顧客は受け入れない」と言われるが、Teslaのミニマルなインテリアやタッチパネル化も当初は否定された。 最終的に、競争の本質は「誰が最適化を速く行うか」ではなく、「誰が何を最適化するか」にかかっている。AIは「リードで歩ませる」べきであり、自動車業界が「再発明のエンジン」として使うかどうかが、次の時代を支配するか否かの分かれ道となる。
