実世界欠陥を活用したAI光学面設計
シンガポール科学技術大学(SUTD)の東兆剛准教授ら国際研究チームは、現実の製造欠陥を学習データに組み込んだ人工知能設計フレームワークを開発した。光学フーリエ曲面の設計プロセスを数秒に短縮可能となり、光電子デバイス開発の効率化が期待される。研究結果は学術誌PhotoniXに発表された。 光学フーリエ曲面は分光計や拡張現実ディスプレイ、高精度センサーへの応用が期待されるが、従来の設計は理想的なシミュレーションに依存しており、実際の製造欠陥や光の入射角変化による挙動を正確に再現できなかった。特に斜め入射光の制御は計算コストが高く、実用化の障壁となっていた。 研究チームはシミュレーションを不要とし、実験測定データそのものを学習するTransformer型ニューラルネットワークExpFormを構築した。廈門大学や合肥工業大学などの研究者と協力し、ナノインプリント試料から広範囲の入射角での反射スペクトルを計測。製造誤差やノイズを含む実データ約2万5000件を学習させた。結果、実験結果との一致率は99.79%を達成し、従来手法より計算速度を約900倍向上させた。 ExpFormは構造と角度からスペクトルを予測する順モデルと、所望の特性から構造寸法と光の角度を逆算する逆モデルを統合した。シミュレーションと試作と評価のループを代替し、単一構造の設計変更なしに角度制御のみで複数機能を発揮させる角度プログラム可能デバイスや、複雑なスペクトル応答のオンデマンド生成を可能にする。 研究チームは実験データセットを無償公開し、分野全体のベンチマーク環境整備を推進する。可視・近赤外帯での実験データ駆動設計の実証は世界初で、高Q共鳴器や三次元メタ構造への拡張も視野に入れる。東准教授は第一原理に基づく設計からデータ駆動の実証型パラダイムへの転換を示す。光子学分野にとどまらず、材料科学や量子デバイス設計にも波及すると指摘している。
