オーキン、仏独デジタル主権サミットで欧州初のパネウローパン生物用エージェンティック基盤を発表
ベルリン——フランス・ドイツデジタル主権サミットの場で、AIバイオテクノロジー企業のオーキン(Owkin)は、フランスのガストー・ルッシーがん研究所とドイツのチャリテ総合がんセンターと連携し、欧州初の包括的エージェンティック(自律的)インフラストラクチャの構築を発表した。この取り組みは、生物学的データをAIが活用できる形に整備し、次世代の「生物学的スーパーアイ」の実現に向けた重要な一歩と位置づけられている。 このプロジェクトの主な目的は、欧州全域の医療・研究データを安全かつ効率的に活用できるAI基盤を構築することだ。従来、生物学データは機関ごとに分散し、プライバシー規制や技術的障壁により共有が困難だった。しかし、オーキンが開発した「フェデレーテッド・ラーニング」や「プライバシー保護型AI」技術を活用することで、データは元の施設に留まったまま、AIモデルが学習できる仕組みを実現。これにより、患者の個人情報は漏洩のリスクを最小限に抑えつつ、大規模なデータ分析が可能になる。 発表の背景には、欧州がグローバルなAI競争で遅れをとっているという危機感がある。米国や中国は先進的なAI研究とデータインフラを強化しているが、欧州はデータの分散と規制の厳しさから、AI活用の進展が遅れていた。今回の連携は、フランスとドイツが主導する「デジタル主権」の理念を具現化する試みとして注目されている。特に、がん研究をはじめとする生命科学分野でのAI活用の加速が期待される。 プロジェクトの転機は、2024年夏に予定される初期インフラの稼働だ。最初の段階では、がんの遺伝子データと臨床データを対象に、AIモデルの開発と検証が行われる。今後、心臓病、神経疾患などに拡大し、新薬開発のスピードと精度を飛躍的に向上させる。また、このインフラは、研究者や製薬企業、医療機関が共同で利用できるプラットフォームとして、欧州の医療イノベーションの拠点となる。 専門家からは「これは欧州のAI戦略の転換点だ」との評価が相次ぐ。オーキンのCEO、スティーヴ・ラヴァール氏は「データは21世紀の新石油だが、その価値を引き出すには、安全で信頼できる基盤が必要。我々は、欧州の科学者たちが、自らのデータでAIを動かせる世界をつくる」と強調。チャリテの研究責任者も「このインフラは、がんの個別化医療の実現に不可欠な一歩」と語っている。 この取り組みは、単なる技術開発にとどまらず、欧州の医療・研究の主権を確保し、グローバルなAI競争に立ち向かうための基盤となる。今後、欧州全体の科学力と医療の質の向上に大きな影響を与えると期待されている。
