世界のAI加速に伴い、公共機関がその運用を導く基盤構築が急務となる中、パトリック・J・マクグレガー財団が7580万ドルを拠出すると発表した。
マサチューセッツ州ボストン発—米国のパトリック・J・マクグレガー財団(The Patrick J. McGovern Foundation)は、公共の利益を目的とした人工知能(AI)の発展を支援するため、世界中の人々や非営利団体、研究機関、地域コミュニティを対象に、合計7580万ドル(約110億円)の資金を提供すると発表した。この取り組みは、AI技術が社会的課題の解決や公平性の向上に貢献できるよう、技術の民主化と倫理的な利用を促進することを目指している。 背景として、近年のAI技術の急速な進展は、医療、教育、環境保護、公共政策など幅広い分野で革新的な成果をもたらしている。しかし、その恩恵は一部の先進国や大手企業に偏っている現状があり、発展途上国や小規模な組織、地域社会は技術の活用から取り残されがちである。マクグレガー財団は、こうした格差を是正し、AIが「誰もが受益できる」ものになるよう支援する必要性を強く認識している。 今回の資金提供は、特に以下のような分野に重点を置いている。まず、AIを活用した社会課題解決のための研究開発を支援する。例えば、気候変動の予測モデルや、医療資源の限られた地域における診断支援システムの開発を後押しする。次に、非営利団体や地域団体がAIを効果的に活用できるよう、技術的リソースや人材育成の支援を実施。また、AIの開発・利用における倫理的枠組みの構築や、透明性・説明可能性の向上に貢献するプロジェクトにも資金を提供する。 この支援は、世界10カ国以上にまたがる100以上の機関・団体を対象としており、特にアフリカ、南アジア、中南米の地域社会に注力している。資金は、研究助成、インフラ整備、教育プログラム、技術コンサルティングなど、多様な形で活用される。特に注目すべきは、AIの開発プロセスに、地域住民や関係者自身が参加できる「共創型」アプローチを推進する点である。これにより、技術が地域の実情に合った形で導入され、持続可能な影響が生まれる。 マクグレガー財団の代表は、「AIは単なる技術ではなく、社会を変える力を持つ。私たちの使命は、その力が不平等を広げるのではなく、すべての人々の未来をより良いものにするためのツールになるようにすることだ」と強調。同財団は、AIの公共的利用を推進する国際的なネットワーク「Public Purpose AI」の構築にも貢献しており、今後、他機関や政府との連携をさらに強化する予定である。 専門家からは、「この資金提供は、AIの社会的インパクトを最大化するための画期的な一歩」との評価が相次いでいる。特に、技術の民主化と倫理的配慮を両立させる試みは、今後のAI政策のモデルケースとなる可能性がある。また、非営利組織や地域社会がAIを自らの課題解決の武器にできるようになることは、持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも寄与する。この取り組みは、AIの未来が「誰のものか」を問う重要な転換点と位置づけられている。
