AI共同研究者で融合エネルギーとがん治療の革新へ:ラングモア研究所とNVIDIAが新プロトコルを開発
人工知能(AI)が科学の進展を加速する新たな形態として「AIコサイエンティスト」の開発が進んでいる。これは、人間の研究者と協働する多エージェント型AIシステムで、仮説の生成・検証・実験計画の立案、データ分析までを支援する。特に、ロスアラモス国立研究所(LANL)とNVIDIAの共同研究では、核融合エネルギーとがん治療の分野で、AIを活用したコサイエンティストの開発が実現しつつある。 まず、核融合研究の分野では、インパルス型核融合(ICF)の仮説生成に向けたAIコサイエンティストの開発が進行中。ICFは、レーザーで微小な燃料を圧縮・加熱し、核融合を引き起こす技術で、太陽のエネルギー源に似ており、エネルギー問題の解決に向けた鍵となる。しかし、物理現象が多様で非線形に絡み合うため、シミュレーションの予測精度が難しく、実験結果と予測が一致しないことも多い。この課題を克服するため、LANLはNVIDIAのNeMoフレームワークを活用し、Llama Nemotron Super 1.5をICF物理に特化した推論モデルに再構築。公開データや専門論文を用いたドメイン適応型事前学習(DAPT)と強化学習を経て、AIは実験条件の最適化や新しい仮説の提案が可能に。このAIは、ナショナル・イグニッション・ファシリティ(NIF)やOMEGAレーザー施設での実験結果と照らし合わせながら、次世代の核融合装置開発に貢献する。 一方、がん治療分野では、α線放出型標的療法(TAT)の効果を高めるための「キレーター分子」の開発にAIが活用されている。TATは、放射性原子を腫瘍に正確に届けることでがん細胞を破壊するが、健康な組織に影響を与えるリスクがある。LANLは、NVIDIAのLlama Nemotron Super 1.5とGenMolモデルを統合し、AIが仮説を生成し、化学構造を設計。その後、Architectorで金属とキレーターの複合体を構築し、NVIDIA搭載の超高速コンピュータ「Venado」で量子シミュレーションを実行。シミュレーション結果をもとに仮説の妥当性を評価し、反復的に最適な分子を探索。このプロセスで、アクチニウム原子と強固に結合する新規分子の発見に成功。 LANLのマーカス・チャドウィック氏は「AIコサイエンティストは、複雑な分野での仮説生成と検証を飛躍的に加速する」と強調。この取り組みは、エネルギー、医療、環境など、人類の重大課題解決に向けたAI活用の先駆けとなる。
