電子鼻が腐敗食品を高精度検知
米カリフォルニア大学バークレー校の研究チームは、人間の嗅覚を超えて食品の腐敗やアレルゲンを検知する電子鼻を開発した。本研究は学術誌Science Advancesに掲載され、電気・コンピュータサイエンス博士課程のカールラ・バシル氏が中心となって主導した。 開発された電子鼻は、カーボンナノチューブを用いた16個の微小気体センサーを一体化したチップ構成を採用している。従来の金属酸化物系センサーと異なり、室温で動作可能でありながらナノメートルレベルの薄膜形成を実現。これにより、高温に弱いポリマーなどの多様な感応材料を単一工程で成膜する製造プロセスを確立した。センサーは気体分子との化学反応を電気信号に変換し、機械学習アルゴリズムが各食品や腐敗段階に固有の気体プロファイルを認識する。 性能面では、平均的な殻付きクルミの百分の一に相当する約0.05グラムの単離されたクルミアレルゲンも検出可能であることが確認された。イチゴ、バナナ、生肉、牛乳など7種の食品の鮮度変化も高精度で判別。バシル氏は、本技術がスマート冷蔵庫への搭載や、食品廃棄の削減、食中毒リスクの低減に寄与すると指摘する。特に、アレルギー持ちの消費者にとって致命的なアレルゲンの混入を事前に検知できる点は、食品安全管理における実用価値が高い。 現時点では実験室環境での検出性能が中心だが、開発チームはiPhoneアプリと連動するポータブル版のプロトタイプ製作を完了済み。今後は多様な環境下での実証実験と感度・信頼性の向上を図り、市販化に向けたスケールアップを目指す。単一のセンサー技術の統合が困難だった従来課題を解決し、製造コストの削減と検知性能の両立を可能にした本技術は、食品検査や家庭用家電のスマート化に新たな標準をもたらす可能性を秘めている。
