医療AI「OpenEvidence」が生命科学分野で首位ユニコーンに
米国医療AI企業OpenEvidenceが、2026年6月発表の胡潤研究院「グローバルユニコーン指数2026」において、生命科学分野で1位となる120億ドルの評価額で選ばれた。2022年に設立された同社は、医師向けに設計されたAI臨床意思決定支援プラットフォームを提供し、わずか4年で業界トップの地位を確立した。 創業者のダニエル・ナドラーらは、情報量が膨大で専門性が高い医療現場の検索負担を軽減すべく、生成AIと検索強化生成(RAG)技術を組み合わせたシステムを開発した。同プラットフォームは、医師が臨床質問を入力すると、査読論文や専門ガイドラインをリアルタイムで検索し、根拠付きの回答を生成する。2026年7月には、証拠品質評価機能「EvidenceGrade」を追加し、AI回答の信頼性向上を図っている。また、NEJMやJAMA Network、米医学会などと正式コンテンツ契約を結び、信頼性の高い医療情報の基盤を構築している。 ビジネス面では、認証済み臨床従事者に対してプラットフォームを無償提供し、急速なユーザー基盤の拡大を実現した。2026年7月時点で約91.5万人の米国の医師、看護師、NP・PAが登録し、月間臨床問い合わせ件数は前年比6倍となる月約1,800万件に達している。この高価値医療トラフィックを背景に、製薬・医療機器企業向けに精准広告サービスを展開。2025年の年間収益は1億ドルを突破した。さらに、Sutter HealthやNYUランゴン医療センター、ニューヨーク長老会医院など主要医療機関が主要電子カルテシステムに同プラットフォームを組み込み、臨床ワークフローへの統合を加速させている。 一方で、臨床評価については議論が分かれている。Nature Medicine系研究では一般大規模言語モデルの方が成績上位となる結果が出ている一方、リアルワールドの臨床現場データを用いた別研究では、OpenEvidenceが正確性と実用性で最も高い評価を得ている。医師からは迅速な文献探索支援として高く評価される反面、希少疾患や複雑な症例では情報抜けや過剰な結論導出の懸念も指摘されている。 収益が1億ドルに対して評価額が120億ドルという高い倍数は、今後の企業病院向けライセンス収益の安定化と、臨床現場における長期的な信頼維持が課題となっている。OpenEvidenceは、広告収入とエンタープライズ展開の二股で、医療AIの実用化と商業化のモデルを模索し続けている。
