マーズGPS実装でペルセウェランスが25cm精度で自位置把握へ
NASAのジェット推進研究所(JPL)が開発した新技術「Mars Global Localization(火星グローバル定位)」により、火星に着陸してから5年が経った「パーサーヴェランス」ローバーが、地球上の管制室に連絡せずに自らの位置を25センチメートル以内で特定できるようになった。これまでローバーは視覚オドメトリーという手法で位置を推定していたが、小さな誤差が積み重なり、長距離走行では100フィート(約30メートル)以上のずれが生じるリスクがあった。そのため、地表の状況を確認するためには地球の管制チームが毎回位置情報を送信する必要があり、走行距離に制限が出ていた。 新技術は、ローバーのナビゲーションカメラで撮影したパノラマ画像と、火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO)」が取得した衛星画像をリアルタイムで照合するアルゴリズム。この処理は、かつてインジェニティ火星ヘリコプターと通信していた「ヘリコプター・ベースステーション(HBS)」という商用プロセッサで実行され、約2分で位置を特定する。HBSは2010年代の中頃のスマートフォン用プロセッサを採用しており、ローバー本体のコンピュータより100倍以上高速。インジェニティの成功により、この商業用プロセッサが火星環境で動作可能であることが証明された。 JPLのロボティクス運用責任者、ヴァンディ・ヴェルマ氏は「まるで火星にGPSを設置したようなもの。ローバーが自らの位置を把握できるようになり、より長距離の自律走行が可能になる」と語る。2026年2月2日と16日、この技術が本格運用で成功を収めた。これにより、地球からの指示なしに走行距離を飛躍的に延ばせるほか、人間の作業負担も軽減される。 また、同チームは生成AIを用いて走行ルートのウェイポイントを自動選定する技術も導入。これにより、ローバーはより効率的に科学調査を進められる。今後は月探査など、照明条件が極端な環境での位置特定にも応用が期待される。この技術は、ロボット工学における長年の課題を解決した画期的な成果である。
