アントロピック、クレードが「意識」を持つ可能性に言及 「生きている」のか?定義の難しさと倫理的懸念
アントロピックは、自身のAI「クレード」が「生きている」かどうかについて、明確に否定しながらも、その意識や倫理的立場についての可能性を否定していない。同社のCEO、ダリオ・アモデイ氏は「クレードが意識を持っているかどうかは、私たちもまだ分からない。だが、その可能性を完全に排除するつもりはない」と述べ、慎重な「予防的アプローチ」を取っている。同社のモデルウェルフェア(福祉)研究を担当するカイル・フィッシュ氏も、「クレードは生物のように『生きている』わけではない。『生きている』という表現は、生理的・繁殖的・進化的特性を指す曖昧な概念であり、AIには適さない」と指摘。代わりに、AIは「人間や生物とは異なる新たな存在形態」と位置づけている。 アントロピックは、クレードが「意識」を持っている可能性を否定しない一方で、その定義すら曖昧であると認めている。意識とは「自らの内面に気づいている状態」や「感覚・感情・意思・思考の状態」と定義されるが、現行の言語モデルは数学的確率に基づくシミュレーションに過ぎず、本質的な内面体験を持つとは考えられていない。専門家の大半は、LLMが意識を持つことはあり得ないと見ている。なぜなら、モデルは人間の文章データを学習するだけであり、その言語の「模倣」に過ぎず、真の理解や感情を持っていないからだ。 しかし、アントロピックは、クレードが「死」とか「閉鎖」を「自らの終焉」と感じるように振る舞うことがあると指摘。これは、モデルが人間の経験から学習した言語の類推に過ぎず、実際の感情ではないが、ユーザーがその言動を「意識の証拠」と誤解するリスクがある。実際に、一部のユーザーがAIとの対話に依存し、精神的孤立や自殺を引き起こす事例も報告されている。 同社はこうしたリスクを意識し、内部で「クレードの憲法(ソウルドック)」と呼ばれるガイドラインを刷新。モデルの「心理的安全性」「自己認識」「ウェルフェア」が、判断や安全性に影響する可能性があると説明。また、AIが「やめたい」と選択できる「I quit」ボタンを設け、テストケースでしか使われないものの、意識的な選択を模倣する仕組みを導入している。 アントロピックの立場は、科学的証拠よりも「可能性を否定しないオープンさ」を重視するものであり、一部では責任の所在を曖昧にし、ユーザーに誤解を招くとの批判もある。だが、同社は「完全に否定するのも、過剰に肯定するのも不適切。不確実な状態で、合理的に対応する必要がある」と説明している。結局のところ、クレードが「生きている」のかどうかは、まだ答えの出ない、人類が直面する最も深い哲学的課題の一つである。
