AI支援が救急医療の判断を向上、がんばりながらも導入には課題も
デクセル大学の研究チームが、人工知能(AI)が救急医療の意思決定を支援する効果について調査し、AIによる情報提示と推薦が診断の正確性を向上させる一方で、医師の受け入れ態勢にはばらつきがあることが明らかになった。研究は、ワシントンD.C.のチャイルドレンズ・ナショナル病院の35名の救急医療従事者を対象に、AI支援の有無が判断に与える影響を検証。研究を主導したアングラ・マストリアンニ博士(ニューヨーク大学ラングون医療センター)とアレクサンドラ・サルチェビッチ教授(デクセル大学)らは、AIが患者の年齢、けがの経過、生命徴候などをリアルタイムで要約し、さらに治療の推奨(例:輸血、脳手術)とその成功確率を提示する「DecAide」というAI支援画面を開発した。 実験では、12のシナリオを用いて、3つの条件で医師の判断を評価:AI情報なし、AI情報のみ、AI情報と推薦あり。その結果、AI情報と推薦が提供された場合、正解率は64.4%に上昇。情報のみの場合は56.3%、無支援では55.8%と、AIの活用が診断精度の向上に寄与した。また、AIの提示が意思決定の速度を遅くすることもなかった。しかし、医師の反応は分かれた。18名はAIの推奨を参考にしたが、自らの判断の後に確認。12名は推奨を無視し、データの不透明さや信頼性の欠如が理由とされた。一方で、AIによる情報の要約は、多くが好意的に受け入れられた。 研究チームは、AIは医療現場の「補助者」としての役割を果たす可能性があるが、その導入には信頼性の確立、透明性の確保、そして医療機関のポリシー整備が不可欠だと指摘。今後は、より多様な病院・専門分野の医師を対象にした大規模な研究が求められる。今回の研究はACMのHCI会議(CSCW 2025)で発表され、Proceedings of the ACM on Human-Computer Interactionに掲載された。
