人型ロボットの現実と幻想:2025年、本当の自律は来るのか?
人型ロボットの登場は、まだ先の話かもしれない。テスラの「オプティマス」がマイアミで開かれたイベントで水筒を渡す途中に転倒する映像が話題となり、ネット上で「ロボット失敗動画」として繰り返し拡散された。この映像では、ロボットが腕を振り上げて後ろに倒れ、瓶を押しつぶす瞬間の水の飛沫が見られ、まるでVRヘッドセットを外す動作に似ている。この出来事は、同社が「自律型」と称するロボットの実態に疑問を呈する一例となった。過去のデモでは、人間がスーツを着て遠隔操作する「仮装」が明るみに出ており、実際にはAIによる自律性は限定的であることが明らかになっている。 人型ロボットへの期待は、エロン・マスクの「100万台のロボット軍」構想に端を発する。しかし、マスクは過去に過剰な予測を繰り返しており、技術の進展が期待に追いついていないことも指摘されている。現在、グーグル、マイクロソフト、ナビデックス、アマゾン、ソフトバンク、中国のバイドゥやアントグループなど、世界中のテック企業が人型ロボット開発に巨額の投資を進めている。中国は「身体的AI」を経済成長の鍵と位置づけ、国家レベルで支援を強化。今年夏には中国で「世界人型ロボット大会」が開催され、ダンスや格闘、競技なども行われるなど、ロボットスポーツの隆盛も目立つ。 しかし、現実の使用例は依然として限られている。Figure AIのFigure 03や1XのNeoは、家事の一部を実演しているが、動作はぎこちなく、多くの場合遠隔操作やステージ化されたデモにすぎない。1XのNeoは2万ドル(約300万円)で販売され、来年から米国で出荷予定だが、実際には「人間がリモートで操作」する必要がある。これにより、自律性の欠如が浮き彫りになる。 技術の進展は確かにあり、AIの進化により、ロボットが複雑な環境を理解する能力が向上している。特に大規模言語モデル(LLM)の発展が、ロボットの柔軟な判断に貢献している。しかし、ロボット用の学習データはインターネット上に豊富に存在せず、実世界の動きを学ぶためには大量のリアルデータが必要。テスラや1Xは、実際の家庭にロボットを導入してデータ収集を進め、モデル改善を図っている。 一方、中国経済計画院は「人型ロボットバブル」の危険性を警告。投資が膨らむ一方で、実用的な用途はまだない。現実には、家事を任せたいなら人間の清掃員を雇う方が安価で確実だ。結局、今後数年は、華麗なデモと実用性のギャップが続く可能性が高い。人型ロボットの登場は「やがて来る」かもしれないが、その時まで、失敗動画を楽しみながら待つしかないのかもしれない。
