AIツールが高血圧の隠れ臓器損傷を解明
オックスフォード大学を中心とする研究チームは、高血圧が引き起こす臓器への損傷を事前に推定する人工知能(AI)ツール「HyperScore」を開発し、学術誌「Circulation」に発表した。本ツールは、従来の血圧数値に依存せず、心臓、脳、腎臓、血管、代謝に関する複数の臨床・画像データを統合解析することで、高血圧に伴う疾患の発症パターンを六つの「HyperTrajectory」に分類する。英国バイオバンクの参加者約二万七千人のデータで構築し、米国の疫学調査「ARIC研究」の五千五百人を対象に外部検証を実施した。その結果、HyperScoreの数値が高いほど、血圧が標準範囲内であっても将来の心血管イベントや臓器障害発症リスクが高いことを確認した。特に脳MRIで検出される構造変化は、高血圧関連損傷の最も強力な指標の一つであった。同研究の第一著者であるMohanad Alkhodari氏は、高血圧が人によって異なる臓器に複雑な影響を与えるため、血圧値のみを基準とした治療から、臓器損傷の個人別パターンに基づく精密医療への転換が可能になると指摘する。オックスフォード大学のPaul Leeson教授は、AIと多臓器イメージングの融合が血圧測定では見逃されがちな隠れた臓器への影響を明らかにすると評価する。英国医学研究理事会(MRC)のJill Jones氏も、機械学習を活用した多臓器データ統合の臨床的価値を強調した。研究チームは、将来的には心電図や基礎的健康測定などの簡易検査で同様のリスク評価が可能になる可能性を示唆している。ただし、本手法は依然として研究段階にあり、日常診療での適用にはさらなる検証が必要である。AIを活用した高血圧の臓器特異的損傷評価は、疾患の早期発見と個別化治療の実現に向けた重要な一歩として、心血管医療の革新に寄与するものと期待される。
