ヨーロッパ初のエクサスケール超計算機「JUPITER」が稼働、AI研究の飛躍へ
欧州初のエクサスケール超計算機「JUPITER」が9月5日、ドイツのユリッヒ科学センターで稼働を開始し、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相によって公式に開幕された。この超計算機は、世界で4番目に高速な性能を実現し、1秒間に1000京回(1エクサフロップ)の演算が可能。米国のEl Capitan、Frontier、Auroraに次ぐ位置にランクインした。JUPITERは、欧州連合(EU)とドイツが共同で資金を出し、2018年から開発された。名称の「Joint Undertaking Pioneer for Innovative and Transformative Exascale Research」は、欧州がエクサスケール時代に立ち遅れず、自らの技術基盤を築くという意図を示している。 JUPITERは、2万4000台のNVIDIAチップを搭載し、AI研究や気象予測、天体物理学、医療研究など幅広い分野での高度なシミュレーションを可能にする。特に大規模言語モデル(LLM)や動画生成といったAI基盤技術の開発において、欧州研究者が自前の高性能計算リソースにアクセスできる点が画期的だ。これまで欧州の研究者は、米国やアジアの超計算機に依存せざるを得なかったが、JUPITERの登場でその状況に変化が生まれる。 環境面でも注目される。EUによると、JUPITERは100%再生可能エネルギーで稼働しており、ドイツの電力網から再生可能電力を購入することで実現。最大負荷時でも17メガワットの電力を消費し、約1万1000世帯分の電力に相当する。専門家は、こうした巨大な計算機が地域のインフラに負担をかける可能性を指摘するが、JUPITERはエネルギー効率面で世界トップクラスの評価を受けている。 研究機関は年2回の公募を通じてJUPITERの利用を申請でき、すでに30のプロジェクトが採択された。AIの基礎モデル開発、気候変動モデル、粒子物理学、新薬開発、感染症対策など、社会課題解決に向けた実用的応用が中心だ。 米バージニア工科大学のコンピュータ科学者、キルク・キャンベル氏は、「欧州がAIのイノベーション競争に本格的に参入できたのは大きな進展」と評価。JUPITERは、技術力の基盤強化と人材育成という観点から、欧州の科学技術力の再興を象徴する存在となっている。
