AI大手の参入懸念に揺れる法務テック、専門性で差別化を図るスタートアップが続々資金調達
法律テック業界は、OpenAIが自社の分野に進出する可能性に対して慎重に前向きな姿勢を示している。契約レビュー、契約書作成、事故損害賠償の訴状作成などを専門とする複数のスタートアップが、この週に資金調達を発表。共通の戦略は「OpenAIに勝てる」独自の専門性を構築することだ。一般向けAIが基本的な法務作業に十分な性能を発揮するようになる中、専門性の低いAIに置き換えられる懸念が広がっている。特に、昨週OpenAIが自社の契約・営業支援ツールを内部で活用していることを公表したことで、同社が自らの開発支援者から競合者に転じる可能性への警戒が高まった。この発表は、DocuSignの株価が二桁安となり、ソフトウェア業界全体に不安が広がる結果となった。 しかし、多くのスタートアップは、自社のビジネスモデルが「ソフトウェア」ではなく「サービス」に近い点を武器にしている。CrosbyのRyan Daniels氏は、契約のレビューを自社のチームが直接行い、LLMを活用して処理時間を1時間以内に短縮している。このモデルは、OpenAIが直接競合するには、多くの弁護士や法務補助員を雇い、トレーニング体制を構築する必要があるため、実現は難しいと指摘。同社はBain Capital VenturesとIndex Venturesから2000万ドルの早期資金調達を獲得した。 同様に、事故訴訟専門のEvenUpが1億5000万ドル、Eveが1億300万ドル、Spellbookが5000万ドルの資金調達を達成。Spellbookは、1000万件以上の契約データで訓練されたWordプラグインを提供し、企業の文書スタイルに最適化された精度を強調。専門性の深さが、一般AIでは再現困難だと主張する。 法律テックの専門家であるJennifer Berrent氏は、「クライアントはChatGPTに深層的な専門知識を求めていない。Googleがすべてを作れるように、OpenAIもすべてをやるわけではない」と指摘。AI企業は戦略的に選択を迫られ、法律テックは「専門性の壁」を守り続けられる可能性がある。今後の展開は、AIの進化と、スタートアップがいかに専門性を深めるかにかかっている。
