ヴァラー・ラボス、膵がん患者の化学療法反応をAIで予測する画期的研究を臨床腫瘍学雑誌に発表
米カリフォルニア州パロアルトに拠点を置くValar Labsは、進行性膵癌患者に対する初回化学療法の最適選択を可能にするAI診断ツール「Vitara Pancreas ChemoPredict」の臨床的有効性を実証した研究を、米国臨床腫瘍学会(ASCO)が発行する専門誌『Journal of Clinical Oncology』に発表した。この研究は、標準的なHE染色病理スライド(あらゆる癌患者に共通して使用される病理画像)をAIが分析することで、膵癌の組織学的特徴と特定の化学療法への反応の関連を予測できるという画期的な成果を示した。研究の主な目的は、長年にわたり臨床現場で求められてきた「初回治療選択をガイドするバイオマーカー」の実現であり、現在の治療判断が患者の全身状態に頼る「試行錯誤型」のアプローチを変えるものだ。 研究は、PanCAN(Pancreatic Cancer Action Network)のSPARKデータプラットフォームとCOMPASS臨床試験から得られた前向きコホートデータを用いて、AIアルゴリズムの開発と厳密な検証が行われた。Valar LabsのAIは、人間の目では定量できない微細な組織構造のパターンを識別し、FOLFIRINOXとGemcitabine/Nab-Paclitaxelという2つの標準初回化学療法のうち、どの治療が患者に効果的かを予測する。その精度は、臨床的に有意な結果を示しており、治療効果の予測が可能になったことで、無駄な副作用や治療期間の損失を回避できると期待されている。 同社の共同創業者兼CTOであるViswesh Krishna氏は「標準病理画像には人間では読み取れない予測情報が豊富に含まれており、AIがそれを解き明かすことができる」と強調。CEOのAnirudh Joshi氏も「長年にわたり治療選択が『当てずっぽう』だったが、科学的根拠に基づくツールが登場した」と意義を語った。膵癌は予後が極めて悪く、2024年時点で5年生存率は約12%にとどまる。現在の治療は生物学的特徴よりも患者の体調に左右されやすく、個別化医療の実現には大きな課題があった。 この研究は、PanCANのAnna Berkenblit医師やKawther Abdilleh博士らの支援を受け、AIと健康データの統合による研究加速の可能性を示した。現在、Valar Labsは、このAI診断を早期アクセスとして、臨床現場の腫瘍科医に提供している。Cedars SinaiのAndrew Hendifar医師(本研究の責任著者)は「このバイオマーカーは、膵癌治療の新たな地平を開くものであり、臨床現場への統合を期待している」と述べている。 Valar Labsはこれまでに前立腺がんや膀胱がん向けのAI診断「Vesta」を展開しており、今回の膵癌診断の実用化により、多腫瘍領域への拡大を果たした。AIを活用した病態解析により、治療の精度と患者の予後改善が期待される。
