AI、脳腫瘍を数分で診断
ドイツ・ハイデルベルクの研究チームが、標準的な組織染色切片のみから脳腫瘍の分子サブタイプを迅速に分類する人工知能システムHetairosを開発した。独がん研究センター(DKFZ)のモリッツ・ゲルストン氏とハイデルベルク大学病院のフェリックス・ザーム氏らが主導し、学術誌Nature Cancerで発表された。本システムは従来の分子解析を補完する補助診断ツールとして、全球の脳腫瘍診断プロセスに革新をもたらす。 Hetairosは計9606人の患者データから収集された1万1000件以上の組織画像を用いて訓練された。データはDNAメチル化解析を基準としており、AIはWHO分類にほぼ相当する102種類の分子サブタイプを識別可能である。診断結果と同時に確信度を提示し、高確度ケースでの精度は約87%に達する。不明確なケースでも候補を大幅に絞り込む機能により、病理医の判断を支援する。 専門家5人による盲検試験では、Hetairosの診断精度は68%で専門家の平均30%を大幅に上回った。上位3候補の的中率でもAIが84%、専門家が約50%であった。研究チームは、現代のAIが熟練医でも見極めが困難な微細な形態学的パターンを認識できることを確認した。検査所要時間も従来平均12日かかる分子解析に対し、組織スキャン後わずか12分で結果を出力する。準備時間を含めても数日以内に診療に反映できるため、診断待ち時間の短縮に直結する。 本システムは分子解析を代替するものではなく、組織量が不足する場合や解析が困難なケースにおける補助ツールとして設計されている。AIの判断根拠となる組織領域を可視化するため、追加検査の対象を効率的に選定できる。コスト面でも標準染色切片を利用するため、高額な分子解析に比べ経済的負担を軽減する。資源が限られた地域でも最先端の診断が実現可能となる。ゲルストン氏は、より大規模なデータ蓄積により希少腫瘍への対応精度も向上すると展望している。Hetairosはデジタル病理とAIの融合による臨床診断のパラダイムシフトを示す事例として注目されている。
