AIが液体水の分子秩序を評価
大阪大学の研究チームは、人工知能を用いて過冷却水の分子構造記述子を体系的に評価する手法を開発した。水は凍結時に膨張するなど他の液体と異なる異常物性を示すが、その原因となる微視的な構造変化を定量化する枠組みは従来存在しなかった。研究グループは、低温域で水分子が高密度液体と低密度液体の二つの状態を競い合うとする仮説に基づき、水素結合網の動態と温度変化の関係を解析する研究を実施。従来の分子動力学シミュレーションデータから抽出された十六種の構造記述子を比較するため、ニューラルネットワークを構築した。 同モデルは入力データから構造パターンを自動学習し、各記述子が異なる液体状態をどの程度正確に識別できるかを試行錯誤で評価。その結果、過冷却域における温度変化に応じて分子配置が秩序化する過程を最も効率的に反映する記述子を特定した。このAI駆動の評価手法は、従来の記述子間に存在する次元や尺度の差異を統一的に比較可能にし、構造情報を認知・分類する人間の知能プロセスを模倣する形で実装された。 本研究成果は、水の異常性が生じる熱力学的状態と構造ゆらぎの因果関係を解明する上での重要な基盤となる。特に、氷核形成機構の理解深化やより高精度な分子モデルの構築に寄与し、将来的な材料科学や流体工学への応用が期待される。本論文は学術誌「Communications Chemistry」に掲載された。
