AIモデル提供者がスタック上位へ進出、エコシステムとデータ主権の再定義
AIモデル提供企業が、技術スタックの上位層へとシフトしつつある。OpenAI、Anthropic、Google、Microsoftらが2025年末にLinux Foundation下に設立した「Agentic AI Foundation」を通じて、AIエージェントのオープンプロトコルを標準化し、モデルからアプリケーションまでを統合的に提供する動きが加速している。この「スタック上昇」の背景には、単なるモデル提供にとどまらず、エージェントの自律的タスク処理やツール連携、ワークフローの自動化といった高付加価値層への進出がある。 特にAnthropicは「Don’t Build Agents, Build Skills Instead」というコンセプトを打ち出し、エージェント自体よりも「スキル」というモジュール単位の機能を重視。これは、モデルの強力な推論力とコード生成能力を活かした、実用的なタスク実行の仕組みを提供する戦略であり、同社のClaude CodeやModel Context Protocol(MCP)がその実現を支えている。MCPはエージェントとツールの接続を標準化し、2025年8月以降に6万件以上のプロジェクトが採用するなど、エコシステムの基盤として急速に普及している。 消費者向けでは、AIが単なる情報提供から、デバイスやアプリ内に埋め込まれたプロアクティブなエージェントへと進化。OpenAIのAgent ModeやGoogleのGemini統合などにより、ユーザーはアプリの切り替えなしにAIに依頼できる環境が整いつつある。これにより、プライバシーと高速処理を実現する「ローカル処理」の重要性も高まっている。 企業向けでは、2026年以降、AIエージェントが財務、営業、サプライチェーンなど複数領域で本格的に導入される。MCPによるエージェント間連携により、企業が自らの利益責任(P&L)をAIに委ねる仕組みも登場。これにより、AIは実験段階を越え、業務の根幹を支える存在へと進化する。 一方で、この流れはクラウド企業やスタートアップに深刻な影響を及ぼす。モデル提供企業が自社のアプリを模倣・再現し、新規サービスを「ロードマップ化」して排除するケースも増加。AWSなどのクラウドプロバイダーは規模を活かすが、インフラ競争が激化し、エコシステムの分断リスクも生じる。 さらに、データとモデルの「主権(Sovereignty)」が最大の課題に。2026年には72%の企業が主権確保を最優先課題と認識しており、企業は自社データを守るための独立型AIスタックやエッジAIの導入を進める。この動きは、大手モデル提供企業の支配を是正する一因となる。 結論として、AIモデル提供企業のスタック上昇は、技術の垂直統合とエコシステム支配を進めつつも、主権と専門性を重視する新たなバランスが求められている。
