AIが複数医師の診療記録から「集団の意思」を読み取り、肝腎症候群の診断精度を向上
カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究チームが、人工知能(AI)を活用して肝腎症候群(HRS)の診断精度を向上させる手法を考案した。この研究は、オンラインショッピングのレビューサイトで使われる「センチメント分析」の手法を医療現場に応用したもので、複数の医師や医療従事者の臨床ノートをAIが統合的に分析し、診断の信頼性を高めることを目指している。研究は、Gastro Hep Advancesに2025年3月に掲載された。 HRSは肝疾患に伴う重篤な合併症であり、入院中の診断が極めて困難なため、早期発見が難しい。研究を主導したUCSFの医学部准教授で消化器科医のジン・ゲ氏は、「AIが複数の医師の意見を統合して『集団の感想』を抽出することで、診断の予測精度が向上する可能性がある」と説明する。 研究では、従来の診断法(血液検査結果など)と、AIが臨床ノートから抽出した感情分析スコアを組み合わせたモデルを比較。その結果、AIを活用したモデルが、患者退院時のHRS診断予測において有意に高い正確性を示した。 特に、医師間で診断意見が分かれるケースでは、AIがケアチームの合意形成を可視化する「統合的要約」を提供し、診療の整合性を高める効果が期待される。ゲ氏は、「『群衆の知恵』は単なる予測を超えて、医療チームが患者の状態に対して共有している認識を示す方向性情報を提供する」と述べている。 現在は研究段階だが、今後の臨床実践への導入に向けて、AIの情報が実際に医療判断や治療計画にどう影響するかを検証する試みが予定されている。このアプローチは、複雑な疾患における診断支援の新たな可能性を示しており、将来的な医療現場の意思決定支援に貢献する可能性がある。
