AI活用で5μ秒JITコンパイルを構築
従来の高速JITコンパイルはアセンブリ言語の深い知識を必要とする複雑なプロセスと見なされ、実用データベースの多くはLLVMやC/C++コード生成に依存していた。しかしその高いコンパイルコストが適用範囲を制限していた。この課題を解決したのが、AI支援を活用した新規JITコンパイル手法の開発だ。データベースプロジェクトpgrustは、AIの力を借りて直接アセンブリをターゲットとした高速コンパイラを実装し、約5μsという驚異的なコンパイル時間を達成した。これにより、SQLクエリのごく一部だけでなく、全てのクエリをリアルタイムで最適化して実行することが可能となった。 技術的な実証として、同プロジェクトは文字列パターンマッチングを行う単純な正規表現エンジンの実装を通じ、その手法を公開している。従来型インタプリタによる処理は手書き最適化コードに対して10〜20倍の低速さが確認された一方、コピーアンドパッチ方式を採用したJITコンパイラは、ARM64アーキテクチャ向けに事前定義されたアセンブリテンプレートを動的に組み立てることで、手書きコードと同等の処理速度を記録した。具体的には、プロローグ、文字比較、ループ制御、フォールバックロジックをユニット化し、ランタイムの抽象構文木に基づいてマシンのコードを生成・実効メモリへ展開する仕組みとなっている。 コンパイルプロセスにおけるアセンブリコードの記述は従来、最もハードルが高い部分とされてきたが、大規模言語モデルを活用することで開発者の負担が劇的に軽減された。この成果は、システムソフトウェアやデータベースの性能限界を再定義する可能性を示唆している。AIによる開発支援が技術的障壁を低下させた結果、従来は実装コストが高すぎると見なされていた最適化技術を実用レベルに持ち込めるとの見解が示されており、今後のデータベースアーキテクチャやランタイム設計に大きな影響を与えることが期待されている。
