AIが造血幹細胞の老化制御中枢を特定
東北大学の研究チームは、人工知能(AI)を活用し、造血幹細胞の加齢を制御する鍵となる遺伝子因子を特定した。研究成果は学術誌Science Advancesに発表された。加齢に伴い造血幹細胞は数を増やすものの、赤血球やリンパ球などの成熟血球産生能力が低下する。チームは単一細胞解析により、加齢幹細胞が未成熟状態の維持と血小板産生準備の二つの遺伝子プログラムを同時に活性化させていることを解明。このシフトは出生前後から段階的に進行し、加齢は突然の機能喪失ではなく継続的な状態変化であることが示された。 制御機構の探索には、約三千万細胞の遺伝子発現データで学習したAIモデルGeneformerを用いた。若齢と加齢の幹細胞・前駆細胞約十六万件で追加学習させ加齢移行を予測した結果、百四十三候補をスクリーニングした上で、転写調節因子Pbx1が加齢の主要な制御点であることを特定した。実験的に若齢幹細胞にPbx1を発現させると、加齢幹細胞と同様の遺伝子発現パターンが再現された。特にPbx1は成熟血球産生に不可欠なGata1遺伝子を抑制し、赤血球産生の低下と血小板産生の相対増加を引き起こすことが確認された。高橋慶洋氏は、加齢幹細胞は単なる機能低下ではなく、独自の傾向を持つ安定した状態へ移行していると指摘する。 本研究はAI予測、大規模スクリーニング、多オミクス解析、動物移植実験を統合した手法により、幹細胞加齢の分子ネットワークを初めて明確に可視化した。今後はヒトにおける同一機構の存在検証と、加齢性貧血、血栓症、クローン造血、血液がんなどの疾患発症メカニズム解明が次の課題となる。
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