AMD、AI開発を身近に——ROCmを搭載したAIバンドルでクライアントPCへのアクセスを簡素化
AMDはCES 2026で、AI開発の障壁を低くするためのソフトウェア戦略を発表した。同社のチーフソフトウェア責任者アンドレイ・ツラヴコビッチ氏とクライアント製品マネージャーのテリー・リーヴス氏は、ROCm(Radeon Open Compute)ソフトウェアスタックの進化と、一般ユーザー向けのAIツールバンドルの導入を明らかにした。ツラヴコビッチ氏は「2023年のROCmは、今日のものとはまったく別物だ」と語り、ROCm 7.2以降のバージョンではWindowsとLinuxの両方で同じソースコードをコンパイルし、バイナリの互換性を実現していると説明。これにより、Ryzen Max搭載のノートPCや「Haloボックス」と呼ばれる新製品でも、ROCmが利用可能になり、AI開発のハードルが大きく下がった。 特に注目されたのは「AIバンドル」の導入。Adrenalinドライバのインストール時に、PyTorch、ComfyUI、Ollama、LM Studio、AmuseといったAIツールをオプションでインストールできる仕組み。これは、開発者ではなく「AIに興味はあるが、設定が難しそう」と感じている一般ユーザー(「プラクティショナー」)を対象に、1クリックでAI開発環境を構築できるようにする狙いがある。Linux版ではROCmが事前インストールされ、開発者が即座に利用可能になる。 一方、AMDはMI300やStrix Haloといった高機能GPUと、クライアント向けのRyzen/ Radeon製品の間で、コードの再コンパイルが必要な課題を認めた。ツラヴコビッチ氏は「開発者の利便性を高めるための共通インターフェース(例:SPIR-V)の導入を検討中」としながらも、リソースの制約と進化のスピードのバランスを重視していると述べた。また、NPUのプログラミングについては、Windows MLやVitisライブラリを通じて対応を進め、Microsoftが提供する抽象化レイヤーを活用する方針を示した。 AMDは、AI開発を「エンジニアだけのもの」ではなく、誰もが手軽に使えるものにすることを目指している。ツラヴコビッチ氏は「AIは未来の計算の基盤。ユーザーが『インターネットから切断した状態で』税金の計算をAIに任せられるようにしたい」と語り、プライバシーと使いやすさの両立を重視。また、FSR 4のオープンソース化については「長期的な計画だが、準備が整った段階で実施」とし、GPUOpenの理念を継続すると強調した。 最終的にAMDは、AI開発の「民主化」を掲げ、開発者だけでなく、一般ユーザーもAIに触れられる環境を整備している。この動きは、GPUメーカーとしての役割を越え、AIの普及を牽引するプラットフォーム企業への転換を示している。
