スタンフォードAI、睡眠データで100種類以上の疾患リスクを予測
スタンフォード大学医学部の研究チームが、睡眠中の身体信号を分析して100以上の健康リスクを予測する人工知能(AI)システム「SleepFM」を開発した。このAIは、1晩の睡眠データから、将来的に発症する可能性のある病気のリスクを評価できる。研究は2024年1月6日、『Nature Medicine』に掲載される予定で、開発の中心はスタンフォードのエマニュエル・ミニョ教授(睡眠医学)とジェイムズ・ズー准教授(バイオメディカルデータサイエンス)が務めた。 SleepFMは、65,000人分、約60万時間の多項睡眠検査(ポリソムノグラフィー)データをもとに学習。この検査は、脳波、心拍、呼吸、眼の動き、筋肉の動きなどを同時に記録する高精度な睡眠評価法で、通常は病院で行われる。研究チームは、こうした膨大なデータにAIを適用することで、従来の臨床診断では見逃されがちな健康サインを発見できると判断した。 AIは、5秒ごとのデータブロックを「言語の単語」として扱い、脳波、心拍、呼吸、筋肉活動など複数の生理信号の関係性を学習。特に「1つずつ信号を除外して再構成する」手法を用いて、異なるデータモダリティ(種類)を統合する「リーブ・ワン・アウト対照学習」を考案。これにより、AIは「睡眠の言語」を理解できるようになった。 実験では、SleepFMが睡眠ステージの分類や睡眠時無呼吸症候群の重症度評価において、既存のモデルと同等以上に正確な結果を示した。さらに、長期間の電子カルテと照合した結果、130種類の疾患が睡眠データから予測可能であることが判明。特にパーキンソン病(C-index 0.89)、認知症(0.85)、心筋梗塞(0.81)、前立腺がん(0.89)、乳がん(0.87)など、C-indexが0.8以上の高い精度で予測できた。C-indexは、2人のうちどちらが先に病気を発症するかを正しく順位付けできた割合を示す指標で、0.8は80%の正確性を意味する。 研究チームは、AIがなぜ特定の病気を予測したのかを解釈するための技術を開発中。例えば、脳は眠っているのに心拍が覚醒状態にあるといった「不整合信号」が、リスクの高い兆候として浮き彫りになった。 この技術は、睡眠データの潜在的な価値を再評価する画期的な取り組みであり、将来的にはウェアラブル機器との連携で、予防医療の新たな柱となる可能性がある。
