MITがAIで量子磁性材料を発見、新ツールSCIGENで幾何制約を導入
麻省理工学院(MIT)の研究チームが、量子特性を持つ新材料の発見を加速するAIツール「SCIGEN」を開発し、実際に2種類の新規量子磁性材料を合成した。この成果は、Nature Materialsに掲載された。生成型AIは近年、数千万種の新材料を自動設計する能力を示してきたが、超導性や量子自旋液体といった「奇抜な量子特性」を持つ材料の発見には限界があった。特に量子自旋液体は、安定した量子ビットの実現に不可欠とされながらも、世界中で確認された候補はわずか十数種にとどまる。 MITの研究チームは、AIが生成する材料が「特定の幾何構造」を満たすように制御する新技術を開発。この技術の鍵は、生成モデルに「設計ルール」を組み込むことで、物理的に期待される量子特性を持つ構造を狙い撃ちで生成すること。特に、アキメデス格子と呼ばれる特殊な2次元格子構造に注目。これらは長年にわたり、量子自旋液体や「平帯」現象の実現に有望とされてきた。 SCIGENは、生成モデル(DiffCSP)の各ステップで出力された材料の構造をリアルタイムで検査。幾何制約を満たさないものは自動で除外される。この「守門人」機能により、AIが「安定なだけ」の材料ではなく、「量子特性の可能性がある」材料を優先的に生成できるようになった。 研究チームは1,000万を超える候補材料を生成。そのうち2.6万種を高性能計算で精査し、41%が磁性を持つことが判明。最終的に、TiPdBiとTiPbSbという2種類の新化合物を実験室で合成。構造と磁性特性がAIの予測と一致したことで、SCIGENの有効性が実証された。 MITの博士課程研究者・論文第一著者・岡部亮太氏は「AIが生成する材料の多くは安定性に偏るが、科学の進展には『可能性』のある材料が必要だ」と強調。同研究の共同研究者である密歇根州立大学の謝偉偉教授とプリンストン大学のロバート・キャバ教授も、SCIGENが量子計算やトポロジカル超伝導材料の探索を飛躍的に加速すると評価。未参加のデレイセル大学のスティーブ・メイ教授も「幾何制約をAIに組み込む画期的なアプローチ」と称賛した。 研究チームは、今後化学組成や機能特性といった新たな制約条件をSCIGENに追加する予定。実験的検証を経て、AIが発見した材料が真の革新をもたらすかが、次の鍵となる。
