AIが58データから100万通りの電解質を探索、4種類の高性能新素材を発見
シカゴ大学分子工学研究所(UChicago PME)のアシスタント教授、チブエゼ・アマンチュクウ氏の研究チームが、わずか58個のデータポイントから出発して、100万通りの潜在的な電池電解質を探索するAIモデルを開発した。この成果は『Nature Communications』に掲載され、次世代電池材料の開発におけるAIの革新的活用を示している。研究の共同筆頭著者であるスミスAIサイエンス博士研究員のライトシュ・クマール氏は、「実験には週や月単位の時間がかかり、何百万ものデータを集めるのは現実的ではない」と語る。そのため、AIが「アクティブラーニング」のプロセスで、実際に電池を組み立ててサイクルテストを行い、その結果をフィードバックすることで、モデルを段階的に改善した。 この手法により、わずか7回のアクティブラーニングキャンペーンと約70回の実験で、4種類の高性能な新電解質溶媒を特定。従来の最先端技術と同等以上の性能を発揮した。クマール氏は、「計算上の代理指標ではなく、実際の実験結果をフィードバックすることで、AIの予測の信頼性を高めた」と強調。初期段階では予測精度が低く、不確実性も高いが、実験を通じてモデルを修正することで、効率的な探索が可能になった。 今後の課題として、共同筆頭著者のマ・ペイエン博士は、既存のデータに依存せず、AIが完全に新しい分子を創出できる「ジェネレーティブAI」の導入を提案。化学空間は理論上10の60乗通りにも及ぶため、従来の知識に縛られない発見が期待される。また、サイクル寿命だけでなく、エネルギー容量、安全性、コストといった複数の要件を同時に評価できるAIモデルの開発も必要だと指摘。クマール氏は、「人間のバイアスから抜け出し、未知の化学空間を探索できるのがAIの強み」と述べ、科学の盲点を克服する可能性を示している。
