AI とシミュレーションで脳 MRI 撮影時間が最大 90% 短縮
スペインのスペイン科学研究所(CSIC)とミゲルエルチェ大学が共同運営する脳神経研究所の研究者らが、人工知能(AI)とコンピュータシミュレーションを活用した新しい脳 MRI の解析手法を開発しました。この手法は「Communications Medicine」に掲載され、従来の方法に比べて高度な MRI スキャンの所要時間を最大 90%削減できることが明らかになりました。研究チームは、従来のように患者の実データで AI を学習させるのではなく、脳の水分拡散プロセスの物理法則に基づいてシミュレーションデータを生成し、それをニューラルネットワークの訓練に用いることに成功しました。これにより、必要な画像データ数を従来の 10%程度に抑えつつ、高い精度で脳組織の状態を示すバイオマーカーを推定できるようになりました。シロビア・デ・サンティス主任研究者は、スキャン時間の短縮により臨床現場でより高度な技術が活用でき、医師が得られる臨床情報が大幅に増加すると指摘しています。また、マキシミリアン・エグル氏によると、シミュレーションを使用することで患者の入手可否やプライバシーの問題に依存せず、必要に応じて無限のデータ量を生成可能で、従来の臨床データに内在するバイアスを排除できる利点があります。実用的な影響として、従来の約 40 分かかる検査が 8 分程度で済むようになれば、待ち時間の長い病院でも治療対象患者数を増やし、システム全体の効率化が図れます。さらに、この技術はアルツハイマー病などの神経変性疾患の早期診断にも貢献が期待されます。これらの疾患は発症前の無症候期が長く、既存の診断技術では詳細な評価が困難でしたが、本手法によりより精密な情報が得られるようになります。加えて、過去に取得された MR イメージデータも、当時の技術制約にかかわらず、本手法を用いて再解釈し新たな知見を得ることが可能になります。これにより、医療現場での神経画像診断の効率とアクセシビリティが大幅に向上することが見込まれています。
