AIが「仮想研究室」を構築し、新型コロナワクチンの新戦略を提案
人工知能(AI)を活用した「仮想科学者」の開発が進んでいる。スタンフォード医学部の研究グループをモデルにした「仮想実験室」は、AIの研究責任者(AI PI)と経験豊富な科学者が共同で構成され、複雑な生物学的問題を解決する新たな手法として注目されている。研究を主導したスタンフォード大学のジェームズ・ズー准教授は、「AIエージェントは言語モデルに基づき、より能動的に行動できる」と語る。このAIは単なる質問応答型ではなく、データの収集やツールの利用、他者とのコミュニケーションを通じて問題解決に取り組む。 仮想実験室は、人間の研究チームと同様に問題を提示され、AI PIが専門分野のエージェントを配置し、議論を進めながら仮説を立てていく。ズー氏のチームは、新型コロナウイルスの変異株向けワクチン開発をAIに課題として提示し、数日で結果を出せた。AIは抗体ではなく、より小型で単純なナノボディという手法を選んだ。これは、AIがより正確なタンパク質モデルを作成できるため、機械学習の精度が向上すると説明されている。 実験では、AIが設計したナノボディが、変異株に強く結合し、かつ誤って他の物質に結合しないことが確認された。また、元の武漢株にも効果があることが分かった。ズー氏は、「AIの創造性を最大限に引き出すことが重要だ」とし、実験データをAIにフィードバックして分子設計をさらに洗練させている。 仮想実験室は、研究の進行を監視する「批判者エージェント」も配置し、問題点を指摘して改善を促す。ズー氏は、AIの介入は1%にとどめ、創造性を制限しないようにしている。この技術は、生物学や医学のデータ解析に新たな可能性をもたらし、既存の研究を越えた発見が期待されている。
