AIと政策で強化する海上インフラのサイバーセキュリティ——MIT研究者がGPSスプーフィング対策に挑む
モンテネグロ出身のストライジンジャ・ジャニユセヴィッチ氏は、米国海軍学院でサイバー作戦とコンピュータサイエンスを学び、現在はMITのデータ・システム・および社会研究所(IDSS)が主催する「技術と政策プログラム」(TPP)で修士課程に在籍。彼の研究は、人工知能(AI)を活用した海事セキュリティの強化に焦点を当てており、技術的アプローチと政策枠組みの両面から、重要な海事インフラの脆弱性を解消することを目指している。 ジャニユセヴィッチ氏の研究は、大型の古式の船舶に存在するサイバー物理システム(CPS)のセキュリティ強化に注力。特に、GPSスプーフィング(偽装信号)による航路誘導攻撃の検出に取り組んでいる。彼は、物理的船体動態モデルと深層学習(LSTM自動符号化器)を組み合わせたハイブリッドフレームワークを開発。このシステムは、環境要因(風速、波の状態)に基づく予測と、実際のGPS位置を比較し、自然なノイズと悪意ある攻撃を明確に区別できる。人間の航海士が正確な判断を下せるよう、AIは補助的役割を果たす。 彼の研究は、MITの情報・意思決定システム研究所(LIDS)とMIT海事コンソーシアムとの共同プロジェクト。コンソーシアムは学界、業界、規制機関の協働により、海事セキュリティの技術革新、業界標準、政策形成を推進している。ジャニユセヴィッチ氏は、シンガポールや韓国など国際的なパートナーとも連携している。 また、2025年夏にAIセキュリティ企業Vectra AIでインターンシップ。AIエージェントや「モデルコンテキストプロトコル(MCP)」のセキュリティリスクを調査。AIが自律的に攻撃を実行する可能性を示す研究成果を、論文「Hiding in the AI Traffic: Abusing MCP for LLM-Powered Agentic Red Teaming」で発表。 ジャニユセヴィッチ氏は、AIセキュリティにおける政策の重要性を強調。「技術の進化が速いため、政策の整備が遅れると重大なリスクが生じる」と指摘。現在、ハーバードとMITが共同開催する「技術と国家安全保障会議」や、欧州関係者を招く「ハーバード欧州会議」の開催準備にも携わっている。 彼の最終目標は、米国とヨーロッパの間でAIとサイバー安全保障の分野で協力を促進し、自らを「橋渡し」として、両地域の知識と政策を結びつけること。MITでの学びを通じて、技術と社会的影響を両立させる実践的なリーダーとして成長している。
