米オープンソースAIチームの衰退
アレン研究所(AI2)のオープンソースAI研究チームがMicrosoftへ集団離脱し、非営利研究機関のモデル開発体制に転換期が訪れた。6月2日、OLMoモデル後期訓練の責任者であるNathan Lambert氏が退職を表明した。同氏は独立研究を続ける意向だが、その直前までにOLMoおよびMolmo開発の主要メンバーが相次いでMicrosoftへ移籍していた。 3月以降、Ali Farhadi CEOら上層部がMustafa Suleyman氏が率いるMicrosoftのSuperintelligenceチームへ転職。教授職を維持しつつ実務へ移行した。4月以降も研究員6名が加わり、AI2のモデル開発執行機能は実質的に縮小した。 離脱の背景には資金調達環境と戦略転換がある。資金提供元のFFSTは2025年下半期より固定運営費から提案審査制へ移行し、実用AI分野を優先する方針を明確にした。これにより大規模計算を要する前沿オープンモデル開発の採択は困難となった。一方Microsoftは高額な株式報酬を提供し、人材の引き込みを加速させた。 AI2は今後、代理CEOのもと基盤モデル競合から科学・環境問題へのAI応用に重点を移す。NSFとNVIDIAが出資するOMAIプロジェクトが前沿研究の重要な資金基盤となる。製品開発は継続するが組織の重心は変化している。 AI2が推進する全チェーンオープンな研究インフラは学界において再現性と教育で多大な影響を持っていた。しかし計算コストの急増と資金調達の市場論理化により、非営利機関が独自に前沿モデルを開発する持続可能性が問われている。Lambert氏は退職メッセージで、科学者の公共的立場を支える制度基盤の弱体化を指摘し、オープンソースAI研究の構造的な課題を浮き彫りにした。
