AI で未来の感情を予測可能に
ノースイースタン大学の応用心理学准教授であるジョシュア・カーティス氏は、機械学習モデルを活用して人の感情を将来予測する研究を進めています。既存の気象予報や株価分析と同様に、過去のデータに基づき感情の傾向を可視化することで、うつ病や不安症などの精神疾患における個人に最適化された予防的介入が可能になると考えています。研究の目的は、万人に一律な治療ではなく、個人の複雑な特性に応じたケアを実現することです。 カーティス氏率いる実験室が行ったパイロット研究では、診断された精神疾患を抱える 34 名を対象に、2 週間にわたり 1 日 5 回、喜び、満足感、悲しみ、不安の 4 つの感情を評価尺で報告させました。得られたデータは、平均値からニューラルネットワークに至る複数の機械学習モデルおよびアンサンブルモデル(複数のモデルを統合した結果)に入力され、1 日後の感情を予測する精度が検証されました。その結果、全参加者全体の平均値を基にしたベンチマークと比較し、個別のモデルの方が高い予測精度を示しました。特に、満足感や喜びの予測には過去の成績に基づくモデルが、悲しみや不安の予測には複数のモデルを統合したアンサンブルモデルが最も有効であることが判明しました。 この研究は「概念実証」の初期段階にあり、モデルは一人ひとりの感情の動向に対して異なる精度を示すことが確認されています。これは、精神健康の要因が人によって大きく異なることを裏付けており、予測モデルも個人に特化している必要があります。カーティス氏は、天気予報と同様に完全な精度は不可能であり、性格や環境変化などの予期せぬ影響で予測が外れる可能性があると指摘しています。しかし、1 週間から 2 週間先程度の予測が可能になれば、ユーザーが自身の感情変化を事前に理解し、行動や習慣を調整する上で有意義な役割を果たすとの見解です。 同大学のドナルド・ロービノー准教授は、本研究が精神疾患の複雑な実態を捉え、個人差を尊重したアプローチを示していることを高く評価しました。今後は対象者を拡大し、スマートフォンの利用状況やウェアラブル端末による身体活動データなどの客観情報を組み合わせた検証を進める予定ですが、予測の限界と倫理的な責任について慎重な対応が求められています。
