AIとPAC-MANが結核新薬開発を加速
マサチューセッツ大学アマースト校の研究チームは、結核治療薬の開発を大幅に加速する新たなパイプラインを開発し、学術誌Nature Microbiologyに発表した。この手法は、人工知能と並列スクリーニング技術を組み合わせ、結核菌の難解な細胞壁を突破する化合物の探索を革新する。 世界保健機関の統計によれば、結核は単一病原体による感染症で年間123万人の死亡者を出しており、依然として最大の感染症脅威の一つである。結核菌は独自のマイコ膜と呼ばれる二重の細胞外膜を有し、これが抗菌剤の浸透を阻害する堅固なバリアとなっている。従来の手法では化合物を一つずつ検査する必要があり、探索に膨大な時間とリソースを要していた。 研究を率いたシグリスト准教授らは、バージニア大学との共同研究でPAC-MANと呼ぶ並列スクリーニング技術を開発。これにより、多数の化学化合物の膜透過性を一度に計測可能となった。研究チームは生成された膨大なデータを活用するため、情報コンピュータ科学部のグリーン准教授の研究室が機械学習モデルMycoPermeNetの開発を担当。PAC-MANで得られた透過性データを学習させた同モデルは、化学構造のみから化合物の膜透過度を高精度で予測できるよう訓練された。 両技術の統合により、研究チームはマイコ膜を通過する分子に共通する物性や構造的特徴を特定。さらに、これらの透過性予測特徴が結核菌殺傷能力と高い相関を示すことを大規模データセットで証明した。 今回開発されたPAC-MANとAI予測モデルの融合手法は、結核菌の防御機構を回避する新薬候補の選別時間を劇的に短縮する。従来の試行錯誤型アプローチから、データ駆動型の創薬への転換を促すこの技術は、多剤耐性結核の対策強化とグローバルな公衆衛生課題の解決に大きく貢献する。
