Elsevier、1800万件の有料論文を活用したAI検索ツール「LeapSpace」を発表
学術出版大手のエルゼビアが、1800万件以上の有料論文を解析できるAIツール「LeapSpace」を発表し、学界に波紋を広げている。同ツールは、大規模言語モデル(LLM)を活用し、ユーザーの質問に応じて論文の内容を検索・要約し、根拠となる出典を提示する。例えば、パーキンソン病の治療薬の再利用可能性についての質問に対して、関連する研究を抽出して引用した。エルゼビアは、自身の論文とエマーラルド、インスティテュート・オブ・ファイジクス、NEJMグループ、セージ出版の合計4社と協力し、この膨大な有料コンテンツの一部をAI分析に開放。分析ごとにパートナーにロイヤルティを支払い、論文の可視性向上も図っている。 一方で、専門家からは批判の声も上がっている。OpenAlexのCEO、ジェイソン・プリーム氏は、「科学文献は全体としてのエコシステムであり、一部のコンテンツを切り出して販売する仕組みは、研究者にとって実用性が低い」と指摘。LeapSpaceのカバー範囲は、2024年の学術論文全体の約22%に過ぎず、半数以上が有料であるため、全体像を把握するには不十分だとする。さらに、ユーザーは分析結果の引用元を読むために別途購読が必要で、複数の有料サービスを支払い続ける「ストリーミングサービスの多重課金」に似ていると指摘される。 また、他の無料ツール(ConsensusやAsta)はオープンアクセス論文に依存しており、実際にはより広範な文献をカバーする可能性がある。LeapSpaceが提供する「信頼カード」機能は、出典の根拠を可視化する点で評価されているが、AIの出力精度を評価する共通基準は存在せず、ユーザー自身が判断を下す必要がある。情報科学者のジェビン・ウェスト氏は、「LLMはユーザーを満足させるように答えを生成するが、それが正しいとは限らない」と警鐘を鳴らす。 エルゼビアの親会社RELXグループのエリック・エンストロムCEOは、LeapSpaceの導入機関が複数あり、ユーザーから「生産性の大幅向上」のフィードバックを受けていると述べる。一方で、他社がコンテンツをAI開発者に提供する中、エルゼビアは自社コンテンツの分析を自社で独占的に展開する方針を明確にしている。これにより、市場支配力の集中が懸念される。専門家らは、AIが科学の進展を加速する一方で、情報へのアクセスの不平等を助長するリスクを指摘している。
