AI設計と実験室進化で設計酵素を改良
ブロード研究所の研究チームは、人工知能によるタンパク質設計と実験室進化手法を融合させることで、従来比で大幅に性能が向上した安定型酵素の開発に成功した。同成果は学術誌Natureに発表され、医薬品開発や産業応用におけるタンパク質工学の標準手法に变革をもたらす可能性がある。 従来のタンパク質進化実験では、目標とする機能を選択的に獲得させる過程で、タンパク質の立体構造が不安定化する課題が長年存在していた。研究を主導するハーバード大学教授兼HHMI研究者のDavid Liu氏は、このボトルネックを打破するため、David Baker研究所が開発したAI設計モデルProteinMPNNを用いて天然のボツリヌス神経毒素プロテアーゼを再設計した。AIは元の構造を維持しつつ熱力学的安定性を強化し、これを進化実験プラットフォームPACEの起点として採用した。その結果、神経変性疾患の原因タンパク質であるataxin-2を切断する性能が、天然タンパク質を起点とした場合と比較して79倍に向上した。 本研究が明らかにした核心的な機構は、事前の安定化が進化過程における突変の許容範囲を広げることだ。機能獲得に伴う構造劣化のリスクをAI段階で吸収できるため、酵素はより自由に突変を蓄積し、新機能へと進化できる。複数の酵素と基質組合せで検証した結果でも、AI設計起点が天然起点を常に上回り、AI設計単独や進化単独では達成不可能な相乗効果が確認された。 Liu氏は「安定したAI設計タンパク質を起点とすることで、進化実験の出力と成功確率が根本的に改善される。この手法は、ゲノム編集ツールや逆転写酵素など、安定性が開発の障壁となっている多種多様なタンパク質エンジニアリングに直ちに適用可能だ」と述べている。今後、創薬候補タンパク質の最適化から産業用バイオ触媒の開発まで、タンパク質設計を必要とする幅広い生命科学分野での実用化が期待される。
