AIがシミュレーション自動化、材料研究を加速
米ド能源省(DOE)アーゴン国立研究所の研究チームは、計算化学・材料科学のシミュレーションワークフローを自動化するオープンソースAIフレームワーク「ChemGraph」を開発し、学術誌Communications Chemistryに発表した。同システムは、研究者が自然言語で課題を記述すると、大規模言語モデル(LLM)がそれを解析し、専門エージェントにタスクを分配して計算を実行する。従来の計算化学には高度な理論知識と数十の手順が必要だったが、ChemGraphは計画立案、計算実行、データ分析を分担させるマルチエージェント方式を採用。推論コストの最適化を図るため、ワークフロー設計には大規模モデルを、実際の計算実行には軽量モデルを組み合わせて活用している。 開発はムラト・ケチェリ氏、タン・デュック・ファム氏、アディティヤ・タニカンティ氏らによって進め、アーゴン研究所の高性能計算施設ALCFの基盤と密接に連携した。量子化学シミュレーションにはexascaleスーパーコンピュータ「Aurora」を、AI推論にはALCFインフランスサービスを利用。生成AIの誤出力を回避するため、LLMが直接回答するのではなく、実際の物理ベースのシミュレーションを起動してデータを得る設計となっている。 ChemGraphは電池開発、燃焼効率向上、重要素材の抽出など、次世代技術の実現を加速させる。DOEのAI科学加速イニシアチブ「Genesis Mission」の方向性と一致し、既に大学での教育ツール、X線吸収近端構造(XANES)解析、ハイスループット材料スクリーニングなどへの応用が検証されている。オープンソースであるため外部開発者も拡張可能で、開発チームは今後チャットボットインターフェースを通じたサービス化を進め、最小限の介入でワークフローを自律的に計画・実行・修正する「自律型発見」の実現を目指している。計算科学の参入障壁を下げ、ラボ実験の失敗を減らし、イノベーションのスピードを高める基盤技術として期待が高まっている。
