AIが病理画像で免疫細胞パターンを解析、直腸がん治療反応を予測
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)とUCLHの研究チームが、人工知能(AI)を活用した免疫プロファイリングにより、直腸がん患者の治療効果を予測できる新たな手法を開発した。この研究は、eBioMedicineに掲載され、診断時に採取される標準的な組織サンプルをAIで解析することで、腫瘍周囲の免疫環境を詳細に評価できることが明らかになった。腫瘍微小環境における免疫細胞の種類や数は、がんの進行や治療反応に大きく影響するが、従来の臨床現場ではこれらの情報を十分に活用できていなかった。 研究チームは、AIに数百万枚の病理画像を学習させ、リンパ球やマクロファージといった重要な免疫細胞の分布と量を自動的に測定。その結果、腫瘍内に多くのリンパ球が存在する患者は生存期間が長く、再発リスクが低いことが判明。一方、マクロファージが多い患者は予後が悪かった。これらの免疫特徴は現在の臨床ガイドラインには含まれていないが、治療の個別化に役立つ可能性がある。 さらに、遺伝子変異との組み合わせ分析により、KRAS遺伝子が正常でリンパ球が多い患者の生存率が高く、TP53変異を持つ患者ではマクロファージの増加が特に悪影響を及ぼすことが示された。また、細胞分裂が活発な腫瘍は免疫系を抑制し、治療効果が低下する傾向も明らかになった。 AIは従来の全ゲノム解析や空間トランスクリプトミクスのような高コスト・高技術要件な手法に比べ、数分で解析を完了できるため、臨床現場での実用化が期待される。研究チームは、医師が簡単に利用できる無料オンラインツール「Octopath」も開発。病理画像をアップロードすると、自動的に免疫細胞の状態を分析する。 研究の筆頭著者である朱綽言氏は、「AIは専門家が見逃す可能性のある免疫の『サイン』を発見でき、個別化医療の実現に向けた重要な一歩」と語る。UCLHのマリア・ホーキンス教授も、「AIによるバイオマーカーの同定は、将来的な治療意思決定の基盤になる可能性がある」と前向きに評価している。ただし、より大規模で多様な患者群での検証が必要であり、今後の臨床研究が重要となる。
