長尾分布を示す不均衡なデータセットは実際の場面で広く存在しており、深層ネットワークがヘッドクラス(多数派、頻出クラス)とテールクラス(少数派、希少クラス)の間で生じるバイアス予測をどのように扱うかという点で大きな課題を呈している。深層ネットワークによって学習されるテールクラスの特徴空間は通常、不十分に表現されやすく、その結果、クラスごとの性能に不均一性が生じる。従来の手法では、テールクラスの特徴を拡張することで特徴空間上の不足を補おうとしているが、これらの手法はテストフェーズでの一般化性能に欠ける。この問題を緩和するため、本研究では、テールクラスの特徴を拡張し、分類器の性能を向上させるための新しいサンプル適応型特徴拡張手法(Sample-Adaptive Feature Augmentation, SAFA)を提案する。SAFAは、ヘッドクラスから多様かつ転移可能な意味的方向性を抽出し、得られた意味的方向に沿ってテールクラスの特徴を適応的に変換することで特徴拡張を実現する。さらに、再利用学習スキーム(recycling training scheme)を活用することで、拡張された特徴がサンプル固有の性質を持つことを保証する。対照的損失(contrastive loss)により、抽出された意味的方向性がクラスに依存せず、モード探索損失(mode-seeking loss)を導入することで、テールクラスの特徴の多様性を高め、テールクラスの特徴空間を拡大する。提案手法SAFAは、プラグイン型のアーキテクチャとして設計されており、訓練フェーズにおいてさまざまな手法と容易に組み合わせ可能であり、テスト時には追加の計算負荷を伴わない。実験結果から、CIFAR-LT-10、CIFAR-LT-100、Places-LT、ImageNet-LT、iNaturalist2018の各データセットにおいて、SAFAを活用することで優れた性能を達成した。