
スマートフォンが人々の主な撮影機器として普及する中、スマートフォンのカメラ性能および関連する計算写真技術(computational photography)モジュールの品質は、消費者市場におけるスマートフォンの評価とランキングにおいて、実質的な基準となってきている。本研究では、スマートフォン写真の知覚的品質評価に関するこれまでで最も包括的な調査を実施した。そこで、66台のスマートフォンによって撮影された合計11,125枚の画像から構成される「スマートフォン写真属性と品質(Smartphone Photography Attribute and Quality; SPAQ)」データベースを提案する。各画像には、これまでにないほど豊富なアノテーションが付与されている。具体的には、実験室環境で厳密に制御された条件下で、各画像について、画像品質、画像属性(明るさ、色彩度、コントラスト、ノイズ度、シャープネス)およびシーンカテゴリラベル(動物、都市風景、人物、屋内シーン、風景、夜景、植物、静物、その他)に関する人間の評価を複数回収した。また、すべての画像について交換可能画像ファイル形式(EXIF)データも記録しており、より深い分析を可能にしている。さらに、本データベースを用いて、ベースラインおよびマルチタスク深層ニューラルネットワークで構築された盲目的画像品質評価(Blind Image Quality Assessment; BIQA)モデルの訓練を初めて試みた。得られた結果は、EXIFデータ、画像属性、高レベルの意味情報が画像品質にどのように関与するか、次世代のBIQAモデルの設計法、およびモバイルデバイス上でより優れた計算写真システムを最適化するための知見を提供する。本データベースおよび提案するBIQAモデルは、https://github.com/h4nwei/SPAQ にて公開されている。