要約
詐欺検出手法に対する関心が、新たな規制の導入および詐欺に伴う財務的損失の増加によって高まっている。詐欺対策における最先端の手法の一つとして、ネットワーク解析が挙げられる。ネットワーク解析は、異なる主体間の相互作用を活用して、詐欺を示唆する複雑なパターンを検出するものである。しかし、ネットワーク解析は保険業界における詐欺検出の文脈において、まだ近年になってからようやく適用され始めたものであり、その可能性は極めて大きいものの、多くのネットワーク手法が実際の応用には至っていない。本研究は、この分野の文献を以下の2点で拡張する。第一に、保険詐欺の文脈において複数のネットワーク解析手法をレビューし、それらを適用した上で、それぞれの予測性能を比較検証する。第二に、ネットワーク特徴量が、主体固有の特徴量(intrinsic features)に比べて、詐欺検出にどれだけ付加価値をもたらすかを分析する。その結果、(1)複雑な手法が必ずしも基本的なネットワーク特徴量を上回るわけではないこと、および(2)claim特有の特徴量のみで訓練されたモデルと比較して、ネットワーク解析が異なる詐欺パターンを検出する上で有効であることが明らかになった。