要約
深層学習手法の急速な進展により、画像分類、物体検出、物体追跡において画期的な成果が得られている。特に、現場に設置された固定位置の多カメラ構成を採用する自動運転システムや交通監視システムは、近年の技術進歩から大きな恩恵を受けている。本論文では、制約付き階層的クラスタリング手法を用いたマルチカメラ・マルチターゲット(MCMT)車両追跡システムを提案する。この手法は軌跡のマッチング精度を向上させ、カメラ間を移動する物体の追跡をより堅牢に実現する。車両の検出と追跡にはYOLOv5、ByteTrack、およびResNet50-IBN ReIDネットワークを採用している。車両の種別や色といった静的属性は、ReID特徴量を用いてSVM(サポートベクターマシン)により推定される。提案するReID特徴量に基づく属性分類手法は、純粋なCNNベースの手法に比べて優れた性能を示した。単一カメラ軌跡(SCT: Single-Camera Trajectories)は、時間的・空間的制約を導入した階層的凝集型クラスタリング(HAC: Hierarchical Agglomerative Clustering)を用いてマルチカメラ軌跡(MCT: Multi-Camera Trajectories)に統合される。SCT間の類似度は、軌跡上に累積された平均ReID特徴量を比較することで評価される。本システムはより多くのデータセット上で評価され、実験結果から、近接行列を操作することでHACに制約を加えることにより、マルチカメラにおけるIDF1スコアが顕著に向上することが明らかになった。本研究で提案するアルゴリズムは「MCT#MAC」と表記される。