
要約
マルチカメラ追跡(Multi-camera Tracking: MCT)は、さまざまなコンピュータビジョン応用において重要な役割を果たしている。しかし、複数のカメラ間で個体を正確に追跡することは、特にIDの誤認識(IDスイッチ)の問題により困難である。本論文では、オンライン処理を活用してこうした課題に取り組む効率的なオンラインMCTシステムを提案する。本システムは、メモリ効率の高い累積的外見特徴(accumulated appearance features)を用いることで、時間的・空間的に広がるカメラネットワークにおいても、個体を安定して表現する。特に、重複領域における階層的凝集型クラスタリング(Hierarchical Agglomerative Clustering: HAC)を用いた軌跡検証により、IDの誤伝播を検出し、修正することが可能となる。2024 AI City Challenge Track 1データセット[39]における評価結果から、本システムは重複領域および非重複領域の両方において高い追跡精度を達成した。HOTAスコア40.3%[29]を記録し、チャレンジ全体で9位の成績を収めた。ベースラインと比較して、軌跡検証の導入により性能が8%向上し、累積的外見特徴の導入によってさらに17%の改善が得られた。