
要約
大規模な航空画像における建物セグメンテーションは、特に密集した都市部における小規模な建物に対して極めて困難である。幾何学的形状が多様で複雑な建物構造は、衛星画像における建物セグメンテーションタスクにさらなる課題をもたらす。本研究では、電気光学(EO)および合成開口レーダ(SAR)衛星画像において、小規模かつ形状が複雑な建物の検出とセグメンテーションを解決する手法を提案する。提案手法として、細部構造特徴に注目する過完備(overcomplete)ブランチと、粗いが意味的特徴豊富な情報を捉える不完全(U-Net)ブランチを備えた新たなアーキテクチャ「Deep Multi-scale Aware Overcomplete Network(DeepMAO)」を構築した。さらに、誤分類されたピクセルの表現力を向上させるための新規な自己調整型増強戦略「Loss-Mix」を提案した。DeepMAOは、小規模かつ幾何学的に複雑な建物の正確な識別において、シンプルかつ効率的である。SpaceNet 6データセット(EOおよびSAR両モダリティ)およびINRIAデータセットにおける実験結果から、DeepMAOは小規模・形状複雑な建物を含む建物セグメンテーションにおいて、パラメータ数のわずかな増加で最先端の性能を達成することが示された。また、DeepMAOに搭載された過完備ブランチは、SAR画像に存在するスぺックルノイズの処理にも寄与することが明らかとなった。