
要約
視覚的質問応答(Visual Question Answering: VQA)の課題は、一般ドメインの実世界画像を対象として広く研究されてきた。しかし、一般ドメインVQAの知見をアートドメイン(ArtVQA)に転移することは容易ではなく、後者では視覚データから抽象的概念や筆致の細部、絵画のスタイルを識別する能力に加え、アートに関する背景知識を有することが求められる。このような課題は、高品質なデータセットの不足によってさらに悪化している。本研究では、ArtVQAの唯一の公開ベンチマークデータセットであるAQUAデータセットに潜む隠れた言語的バイアスに着目する。その結果、多くの質問は視覚情報にアクセスせずに回答可能であることが明らかとなり、ArtVQAにおける「V」(視覚)の意義が著しく薄れてしまう。この問題に対処するため、SemArtデータコレクションから得られた構造化情報を用いて、シンプルでありながら実用的なデータセット「ArtQuest」を構築した。本研究で用いたデータセットおよび結果の再現に必要なパイプラインは、すべて公開されており、https://github.com/bletib/artquest にて入手可能である。