
要約
引数ペア抽出(Argument Pair Extraction: APE)は、2つの文章から引数を抽出し、それらの間に潜在的な引数ペア関係があるかどうかを特定する研究課題である。従来の研究では、このタスクを単一のシーケンスラベリング問題および2つの文章を直接連結した状態での二値分類問題として扱っていたが、このアプローチには、2つの異なる文章が持つ固有の特徴や内在的な関係を十分に活用できていないという限界がある。本論文では、これらの課題に対処するため、注意機構を導入したマルチレイヤー・マルチクロスエンコーディングスキームを提案する。新モデルは、2つの文章をそれぞれ独立したシーケンスエンコーダで処理し、相互の表現を注意機構を用いて更新することで、より豊かな表現を獲得する。さらに、引数ペアの予測部分を、2つのシーケンスのカルテシアン積(直積)の表現を更新することで、テーブル埋め込み(table-filling)問題として定式化している。また、各引数がそのペアとなる引数と整合するように導くための補助的注意損失(auxiliary attention loss)を導入している。広範な実験の結果、本モデルは複数の代替手法と比較して、APEの性能を著しく向上させることを示した。