要約
近年、静的知識グラフ(SKG)におけるエンティティおよび関係の表現を学習するための知識グラフ埋め込み(KGE)手法において顕著な進展が見られている。しかし、知識は時間とともに変化する。特定の時刻に発生した事実を表現するため、時系列知識グラフ(TKG)埋め込み手法が提案されている。しかしながら、現存する大多数のモデルは、意味的情報と時系列的情報の独立性を無視している。我々は実証的に、現行のモデルが異なる時刻における同一エンティティまたは関係の表現を区別する困難さを確認した。このような問題に対処するため、本研究では時系列知識グラフ補完を目的とした「TimeLine-Traced Knowledge Graph Embedding」(TLT-KGE)を提案する。TLT-KGEは、エンティティおよび関係を時刻付きで複素数ベクトルまたはクォータニオンベクトルとして埋め込むことを目指す。具体的には、TLT-KGEは意味的情報と時系列的情報を、複素数空間またはクォータニオン空間の異なる軸としてモデル化する。同時に、意味的情報と時系列的情報の関係を明確に捉えるための2つの特徴的な構成要素を設計した。このアプローチにより、本手法は意味的情報と時系列的情報の独立性を明確に区別しつつ、両者間の関連性も適切に捉えることが可能となる。リンク予測タスクにおける実験結果から、TLT-KGEが最先端の競合手法に対して顕著な性能向上を達成することが示された。ソースコードは、https://github.com/zhangfw123/TLT-KGE にて公開予定である。