野外における自動顔面表情認識(FER)は、深層ニューラルネットワークを用いても、顔画像におけるクラス内変動(intra-class variations)とクラス間類似性(inter-class similarities)のため、依然として困難な課題である。深層度量学習(Deep Metric Learning: DML)は、学習された埋め込み特徴の識別力を向上させることで、こうした問題に対処するため広く用いられている手法の一つである。本論文では、同一クラスのサンプル間で埋め込み特徴ベクトルの相関を高め、異なるクラス間では相関を低くするようにネットワークを誘導するための、適応的相関損失(Adaptive Correlation Loss: Ad-Corre Loss) を提案する。Ad-Corre Lossは、特徴識別器(Feature Discriminator)、平均識別器(Mean Discriminator)、埋め込み識別器(Embedding Discriminator)の3つの構成要素から構成される。特徴識別器は、同じクラスに属する特徴ベクトルが高相関となるように、異なるクラスに属するものでは低相関となるようにネットワークの学習を誘導する。さらに、平均識別器は、異なるクラスの平均埋め込み特徴ベクトルが互いに類似しないように学習を促進する。本研究では、Xceptionネットワークをモデルのバックボーンとして採用し、従来の手法とは異なり、各サンプルの埋め込み特徴空間をk個の特徴ベクトルを含む構造として設計した。その後、埋め込み識別器は、生成された埋め込み特徴ベクトルが互いに類似しないようにネットワークにペナルティを与える。本モデルは、提案するAd-Corre Lossと交差エントロピー損失(cross-entropy loss)を組み合わせて訓練した。AffectNet、RAF-DB、FER-2013の各データセットにおいて、非常に有望な認識精度を達成した。広範な実験およびアブレーションスタディの結果から、本手法が野外環境下における困難なFERタスクに対しても優れた性能を発揮できることを示した。