医療画像の登録性能と速度は、先進的な深層学習ベースの手法によって大幅に向上している。しかし、現在の大多数の手法は、入力画像間の大きな変形に対して脆弱であり、登録性能の向上を図るためには、モデルの受容野を拡大し、長距離空間的関係を効果的にモデル化する能力を高める必要があるが、その代償として計算コストの増加を避けられない。本稿では、計算コストを低く抑えつつ、大きな変形を持つ画像の登録性能を向上させるために、大範囲の受容野および長距離空間的関係をモデル化できる軽量な登録モデル、すなわちLL-Netを提案する。LL-Netの核心構成要素は、矩形分解大カーネル注意(Rectangular Decomposition Large Kernel Attention: RD-LKA)層と、空間的・チャネル的融合注意(Spatial and Channel Fusion Attention: SC-Fusion)層である。RD-LKA層は、異方性の深度方向大カーネル畳み込みを用いることで、極めて少ないパラメータ数で大範囲の受容野を捉え、長距離空間的関係を効率的にモデル化する。さらに、SC-Fusion層は特徴量の融合能力を強化し、重要領域における特徴表現を強化する。実験結果から、LL-Netは複数のデータセットにおいて最先端の性能を達成した。具体的には、IXIデータセットにおいてDiceスコア76.7%、HD95 2.983 mmを、OASISデータセットではDiceスコア87.8%、HD95 1.042 mmを達成した。これらの結果は、LL-Netが大範囲の受容野を効果的に捉え、長距離空間的関係を正確にモデル化できることを裏付けている。LL-Netの実装コードは、https://github.com/BoyOfChu/LL_Net にて公開されている。