
要約
中国語の四川方言のように広く話されている方言については、大規模かつオープンソースのデータが極めて不足しており、これにより音声技術の進展が著しく妨げられている。この重要な課題に対応するため、我々は新しい「四川パイプライン(Chuan-Pipeline)」を用いて構築された、1万時間に及ぶ豊富なアノテーションを備えたコーパス「WenetSpeech-Chuan」を紹介する。このコーパスの有効性を厳密に評価できるようにするため、手動で検証された発話文を備えた高品質なASR(音声認識)およびTTS(音声合成)ベンチマーク「WenetSpeech-Chuan-Eval」も同時に公開する。実験の結果、WenetSpeech-Chuanで学習されたモデルは、オープンソースシステムの中で最先端の性能を達成し、商用サービスと比較可能な結果を示した。WenetSpeech-Chuanは、四川方言に対する最大規模のオープンソースコーパスとして、方言音声処理研究への参入障壁を低減するだけでなく、音声技術におけるAIの公平性向上とバイアス低減にも重要な役割を果たす。本コーパス、ベンチマーク、モデルおよび関連資料は、プロジェクトページにて公開されている。