
要約
空間時系列データは広く存在しており、交通、気象、エネルギー需要など多くの分野における予測に重要な応用を持つ。しかし、その複雑な成分間相関関係および非線形な時系列動態は、従来の手法では取り扱いが難しい場合がある。既存の手法は、空間的および時系列的特性を別々に学習することでこの課題に取り組んでいる。本研究では、空間時系列相関を同時にモデル化可能なTransformerベースのアプローチであるTemporal Graphormer(T-Graphormer)を提案する。Graphormerアーキテクチャに時系列符号化(temporal encodings)を導入することで、各ノードがグラフシーケンス内のすべてのトークンに注目できるようになり、事前のインダクティブバイアスを最小限に抑えたまま、豊かな空間時系列パターンを学習することが可能となる。実世界の交通予測ベンチマークデータセットを用いた実験により、T-Graphormerの有効性を示した。最先端手法と比較して、T-Graphormerは平均二乗誤差(RMSE)を最大20%、平均絶対誤差率(MAPE)を最大10%低減した。